区分経理の方法とは
公益法人は、貸借対照表及び損益計算書について、公益目的事業に係る経理(公益目的事業会計)、収益事業等に係る経理(収益事業等会計)及び法人の運営に係る経理(法人会計)の各経理単位の内訳の表示を行うとともに、損益計算書の各経理単位の内訳について、複数の公益目的事業又は収益事業等を行う場合は、各事業ごとの内訳の表示を行わなければなりません(各経理単位の内訳表示及び各事業単位の内訳表示を以下「区分経理」とする。)。
当該内訳情報は、公益法人の会計基準に従い、財務諸表の注記(6.貸借対照表の注記(1) 会計区分別内訳及び18.活動計算書の注記(2)会計区分及び事業区分別内訳)において表示することとなります。
特例区分経理とは
令和6年改正法の施行(令和7年4月1日)から3年が経過するまでの間(令和10年3月31日まで)に開始する事業年度においては、認定規則第19条第1項の規定の適用(収益事業等の収益の50%超を繰り入れ)を受ける法人以外の法人においては、貸借対照表の経理単位の内訳の表示を省略することができます(認定規則第42条第3項。以下「特例区分経理 」という。)。
特例区分経理をする法人は、財産目録及び収支予算書の区分も不要です(認定規則附則第9項)。
一方、区分経理を前提とした新たな制度(公益目的取得財産残額の算定、公益目的事業財産を公益目的事業以外に使用等できる場合)については、適用されず、従前どおり毎事業年度の公益目的取得財産残額に準ずる額の算定(定期提出書類の別表Hの作成)が必要となります。
区分経理を行わないことができる公益法人(認定規則第43条)
小規模法人の負担等に配慮し、収益事業等を行わない公益法人であって、各公益目的事業ごとの内訳を損益計算書に表示している場合(単一の公益目的事業のみを行う法人の場合、損益計算書の作成をもって当該要件は当然に満たす)には、区分経理を行わないことが出来ることとされております。
この場合には、法人運営を行うために必要な財産以外の財産を、全て、公益目的事業のために使用等しなければならないとされています。
公益目的取得財産残額の算定への影響
旧制度での算定
一部の法人を除き、公益目的事業財産とそれ以外の財産を明確に区別するようになっておらず、公益法人がある時点で保有する公益目的事業財産の合計額は明らかではありませんでした。
そのため、各事業年度における公益目的事業財産の増加と減少から公益目的増減差額を算定し、当該額と各事業年度の末日における公益目的保有財産の帳簿価格の合計額を公益目的取得財産残額に準ずる額として算定することとしていました。
令和6年度改正
公益法人の作成する貸借対照表について、公益目的事業会計、収益事業等会計及び法人会計の各経理単位の内訳を表示することを義務付けることで、貸借対照表の公益目的事業会計の部分において、公益法人が各事業年度末において保有する公益目的事業財産の合計額が表示されることとなりました。
これを踏まえ、公益目的取得財産残額の算定方法が公益目的事業会計の純資産額を基礎に算定する方法に改められました。
令和6年会計基準の適用時期について
令和7年4月1日以降に開始する事業年度から令和6年会計基準が適用され、3年間の移行期間の後、令和10年4月1日以降に開始する事業年度からは、全ての公益法人が同会計基準に従って会計を処理することが求められます。
それまでの間は、引き続き従前の公益法人会計基準(平成20年会計基準)によることができます。